■藤村製絲工場の鉄骨トラスを配した店内は、レトロモダンな落ち着く空間

高知県内で 18店舗を経営する「現代企業社」。その店舗は、メルヘンな空間づくりだったり、空き家や古民家をリノベーションしたものだったりと、とにかく建築デザインにほれぼれします。

今回は、10月に現代企業社「ネレウス」の隣にオープンした「TRITON(トリトン)」をご紹介します。
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パン屋が一緒になった地産地消にこだわったレストランで、高知県の産業振興計画の補助も受けているそうです。

私にとって、トリトンはある意味思い入れのあるお店。奈半利町の国の近代化産業遺産に指定されている「藤村製絲株式会社」の工場の廃材が店舗に使われているからです。どう廃材がいかされているのか楽しみでした。

お店に入った瞬間から、ワクワクわくがとまりません。
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レトロでありながら新しい感じがする空間でづくり。
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イスやテーブルなども古道具風で素敵。
BlogPaint
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お店のメインに使われている鉄骨トラスが、藤村生絲株式会社の工場にあったもので移設されたそうです。
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無機質感と古っぽさ。全体の雰囲気をつくる素材として目を引きつける、しっかりとした存在感がありました。
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よかった、ここで生きていてくれて。
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とにかく素敵な空間で、ずっと見ていたい、そんな感じでした。

トイレも面白かったです。入り口が一瞬わかりません。
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女子トイレの入り口。
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よくみたら、取っ手の上段は女の子トイばっかりで楽しい演出。

パン屋スペース
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こちらの空間はメルヘンチックでいいかんじでした。(15時頃にはほぼ売り切れてました)


■南国市を中心に、高知の地産地消のメニューが味わえる

平日のお昼に行ったのですが、オープンして少したっているというのに駐車場は満員でランチを断念。ティータイムに再度来店して座ることができました。

地元のものをつかっているメニューとして「山羊ミルクプリンブリュレ風」を注文。
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ヤギのミルクだからなのか、さっぱりとした味わいでした。バリバリで固いカラメルがないほうがよかったかなー
(辛口ですが、現代企業社さんの料理の味は私にとっては…なものが多いです。空間づくりが素晴らしい分、料理のクオリティが上がることを常に願っています)

他にも
・南国の斉藤牧場の搾りたてミルクを使ったフレンチトースト
・南国の冷菓・久保田のジェラート
・「屋根の上のガチョウ」のケーキ各種(現代企業社の別店舗) など
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ドリンクは
・霧山茶園の紅茶
・山羊ミルクのホットチョコレート
・あめ湯
・柚子・文旦・小夏スカッシュ
など、高知ならではの味がいろいろ。

お食事メニューは
・イタドリとパンチェッタのスパゲティ
・柚子とちりめんのたらこスパゲティ
・四万十ポークのミートローフのせボロネーゼスパゲティ
・イタドリのピッツア
・土佐赤牛のグリル
・ごめんシャモのスパイス焼き
・マヒマヒ(シイラ)のグリル焼き
・四万十鶏のハーブ焼き
などなど。

南国市の食材を中心に、高知の味を押したメニューは素敵ですね。ごめんケンカシャモのバリエーションがいろいろあるのも素敵ですし、こんど食べてみたいです。イタドリのスパゲティも気になります。

レトロで雰囲気のある大人なレストラン。地産地消のものが食べられるので観光客の方にもオススメです。

◎農園レストラン・TRITON(トリトン)
住/高知県南国市大埇乙847-1(ネレウスの南隣)
営/9:00~22:30(L.O.22:00)※モーニングは11:00まで
問/088-856-5312

※ネレウスの地図です。すぐ近くにトリトンがあります。


■奈半利の「藤村製絲記念館」で、現役だったころの鉄骨トラスに思いを馳せて

トリトンに使われている立派な鉄骨トラスがあった藤村製絲のお話。
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(近代化産業遺産に指定されている藤村製絲の西蔵)

大正6年に操業し、絹製造で高知の近代化を支えてきましたが、2000年代、ブラジルに工場を移転。奈半利の工場のは閉鎖され、保存されていましたが、その維持管理が難しくなり、昨年、この西蔵のみを残し、惜しまれつつすべて取り壊されました。今は、跡地で太陽光発電が行われています。

まだ、現存していた頃、地元の町並みガイドの会・ななり浦の会が主催したアートイベントが素敵だったので、そのときの私の記事を貼っておきます。

壊される前の工場を知人のフォトグラファーが紹介しているサイトです。

今は、工場の一部の機械や資料が、藤村製絲内にある記念館で展示されていて、見ることができます。

トリトンに使われている鉄骨トラスが現役だったころの写真なども見られると思うので、ぜひ、トリトンと藤村製絲合わせて足を運んでみてください。

◎藤村製絲株記念館
住/高知県安芸郡奈半利町乙2630
営/平日9:00~16:00)
※土曜、日曜は予約が必要。
料/無料
問/0887-38-4711
■消えゆく歴史的価値ある建築物。文化的価値の保存と取り壊しについて思うこと

建築物の保存は巨額の費用がかかり、価値ある古民家や藤村製絲のような歴史が刻まれた工場などが取り壊されることは全国各地で起こっていることです。文化的価値とそれを保存するためにかかる費用が、いつも天秤にかけられます。

市町村役場が買い取って、修復活用する地域もあったりするので、私は、このような方法でなんとか保存活用される道が選ばれるのが一番の望みです。それが「まちらしさ、そのまちの魅力」を保つことだから。

でも、そうできなかったとしても、こうやって企業が廃材を買い取って活かすことで、他の場所で息づくこともできる。そうでなければただゴミとして破棄されるのです。その建物の歴史と価値を理解して購入したり、資金を投じてくれる経営者さんが増えることも、また願っていることのひとつです。